僕は友達が少ない 10巻 感想 「そして彼ら彼女らは成長する」
あとがきでこの巻を11巻と言っている辺り、MF文庫側との確執は思ったよりも深そうだ。
彼ら彼女らは成長しないわけにはいかない。
いくらスペックが高くても、残念であっても。なぜなら、まだ高校生にしか過ぎないのだから。
この巻は修学旅行の続きから始まる。
友達という言葉の免罪符。それによって小鷹と理科はすべてを見なかった、なかったことにする。それは恋すらも殺す。
隣人部メンバーと生徒会メンバーは人狼ゲームを始める。元からあるゲームなだけあって、さすが話が練られていた。星奈の不可解な行動により、夜空は星奈が占い師であることを理解して、行動した。今まで断片的にしか見えてこなかった夜空と星奈の友情がはっきりと見えた瞬間でもあった。ここからラストへのつなげ方が非常に上手だと感じた。
夜空は人狼ゲームや日向さんへの家庭教師をやっていくうちに、姉である日向さんとの確執を徐々に取り除いていった。そして、夜空は憎んでいたリア充へと突き進む。
一方、星奈は他人に合わせるということを小鷹から助言され、それを実行していく。変わらないわけではいられない。それは小鷹も理解していた。小鷹も自分から変わろうとしていく。黒髪のカツラとメガネを使って、おとなしい自分を表現する。
星奈は結局他人に合わせることができなかった。星奈が他人を貶す。それを見て、群衆は星奈を徹底的に避難する。夜空はここでも星奈をかばうのだ。いつものように。なぜなら、友達だからだ。
初めて夜空は星奈に対して友達という言葉を使う。客観的に二人の進む方向性が正しいのかどうかはわからない。多分間違っているのだろう。それでも、二人にとっては確かに正しいのだ。
そして、小鷹も夜空と星奈を庇って、自分は学園中の嫌われ者になる。自己犠牲?
いいや、彼はなによりも利己的だった。夜空も星奈も守りたいのだ。そこに友情があるから。恋愛という感情は押し込める。
幸村との会話。彼女との会話によって、実は小鷹は理科が好きだったことに気づかされる。友情という蓋は何よりも重い。自分の感情を覆い隠す。そして、幸村の告白。返答はイエスだった。
この作品で描きたいのは、成長と、恋愛、友情だ。恋愛と友情、どのように成立されるのかをこの作品では徹底的に描き切るつもりだろう。
次がエピローグと言っているが、最終巻とは言っていないのでもう少し続けるのかもしれない。